第3話 一日に何回、不安は届くのか

数えてみる

真司は赤い丸が付いた新聞を持ち帰った。

「人は一日に何回、不安を感じる情報に触れているのか。」

記事には答えは書かれていなかった。

代わりに、こんな一文だけがあった。

「数えてみれば、見えてくる。」

その夜、真司は小さなメモ帳を取り出した。

翌日から、不安を感じた瞬間に印を付けることにした。


見えない波

朝、スマートフォンの通知。

「値上げ」

一つ目。

電車の中のニュース。

「将来への不安」

二つ目。

昼休み。

同僚が言う。

「この先、どうなるんだろうな。」

三つ目。

帰宅すると、動画サイトには「知らないと損をする」「今すぐ確認してください」という言葉が並ぶ。

四つ目。

五つ目。

六つ目。

一日が終わる頃、メモ帳は小さな印で埋まっていた。

真司は気づく。

「今日は一度も危険な目には遭っていない。それなのに、一日中、不安を感じていた。」


誰が流しているのか

翌日も、その次の日も数え続けた。

日によって話題は変わる。

経済。

災害。

AI。

健康。

犯罪。

内容は違うのに、不思議なことが一つだけ共通していた。

「今すぐ気にしなければならない」という空気。

真司はノートに書く。

「情報は事実を伝えているだけなのか。
それとも、私の『注意』を奪い合っているのか。」

その瞬間、胸の奥に小さな違和感が生まれた。

「もしかすると、本当に奪われているのは、お金でも時間でもない。」


最初の鍵

家へ帰ると、ポストに差出人のない白い封筒が入っていた。

中にはカードが一枚。

そこには短く書かれていた。

「次は『時間』を調べなさい。
何を失ったのか、それが分かる。」

真司は静かにカードを裏返した。

裏には、砂時計の絵だけが描かれていた。

彼は初めて、この出来事は偶然ではないのかもしれないと思い始める。

第4話へ続く。