第4話 失われた時間

― 砂時計の意味

白いカードの裏に描かれていた砂時計。

真司は机の上に置き、しばらく眺めていた。

「時間を調べなさい。」

たったそれだけの言葉なのに、不思議と心に引っかかった。

翌朝、彼は一つだけ実験をすることにした。

「今日は、自分の時間が何に使われたのかを書き出してみよう。」


― 消えていく一日

朝、目覚ましを止める。

そのままスマートフォンを開く。

ニュースを一つ。

天気を確認。

おすすめ動画を一本。

気づけば二十分が過ぎていた。

昼休みも同じだった。

「五分だけ」のつもりが、短い動画を見続けて十五分。

夜にはSNSを眺め、コメントを読み、また別の話題へ。

その日の終わり、真司はメモを見て苦笑した。

「今日は忙しかった」と思っていた。

しかし、本当に忙しかったのではない。

時間が、細かく切り刻まれていた。


― 失ったもの

翌日、真司はスマートフォンをバッグにしまったまま、公園のベンチに座った。

何もせず、十分だけ空を眺める。

最初の数分は落ち着かなかった。

「何か見逃している気がする。」

「通知が来ているかもしれない。」

そんな考えが次々と浮かぶ。

だが、十分が過ぎたころ、不思議な感覚になった。

頭の中が少し静かになったのだ。

そのとき、真司はノートに書いた。

「私が失っていたのは時間ではない。
考える時間だった。」


― 次の手がかり

その夜、本棚の『1984』を開くと、今まで気づかなかった一枚の紙がページの間から滑り落ちた。

そこには、たった一行だけ。

「考えなくなった人は、誰の人生を生きるのか。」

真司は静かに本を閉じた。

この謎は、社会について調べる物語ではない。

自分自身についての物語なのかもしれない。

――第5話へ続く。